これは4/10の毎日新聞の記事のタイトル


"夢の向こうに”のシリーズ第2部だ。


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♪しあわせ~って なんだっけ  なんだっけ

   ポン酢しょうゆのある家さ ♪


明石家さんまが踊りながら歌い、寄せ鍋のアップが画面に広がる。

キッコーマンのCM。


86年冬、バブル景気が始まっていた。

虚飾の時代は91年初頭まで4年以上続く。

キッコーマンのCMは、関口菊日出さんが手がけた。

当時43歳。

CMディレクターとして充実した日々だった。

仕事はどんどんやってくる。

毎晩のように六本木や青山で朝まで飲んだ。

家には帰らない。

中学生の娘や小学生の息子と遊ぶこともなかった。

たまに帰ると、妻は「いらっしゃい」と言った。


家族は事実上、壊れていた。

世間もバブルに浮かれていた。


ふと、考えた。


「僕らは何を探しているのだろう。」


そんな時、

「幸せって何だっけ」が浮かんだ。


「家族って、本来は同じテーブルを囲んで

一緒にご飯を食べるものなんだよな」

わかってはいたが、結局離婚した。

忙しさを理由に、幸せから逃げていた。

偉大な先輩の死が心から離れなかった。


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73年12月、鬼才と呼ばれたCMディレクター、杉山登志さんが

37歳で自殺した。


杉山さんは会社の先輩で

国内外の賞を総なめにしたスター。

「のんびり行こうよ、俺たちは・・」のモービル石油や

女性の美を追求した資生堂のCMなどで知られる。


杉山さんのベッドの枕元に

1枚の原稿用紙が遺されていた。


<リッチでないのに リッチな世界などわかりません。

ハッピーでないのに ハッピーな世界などえがけません。

「夢」がないのに「夢」をうることなどは・・・・・

とても うそをついてもばれるものです>


読んだ瞬間、「ジョークだ」と感じた。

リッチでハッピーでないと、広告をつくれないなら、誰もできない。

むしろ逆だと思った。


「幸せな人間に幸せは描けない」


そう信じた。

だから、家族から遠ざかった。


以下略(途中も少し削っています)


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この記事になぜか魅かれて

思わず長々と書いてしまった。

このCMが話題になったころは

こどもだったからか

なぜ、話題になるのかよくわからなかった。

そんなに好きなCMでもなかった。


でも大人になって

なぜかこのCMをふと思い出したりすることがあった。


ノー天気なCM、としか映っていなかったこのCMに

いろんな思いを抱くようになった。

私も年をとったなあ、と思う。


しあわせって何だっけ??


関口さんは記事の最後、こんな風に書いている。


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「しあわせって・・・」。

答えは今もわからない。

そして、杉山さんが本当は何を言おうとしたのか、も。